情報Iが大学入試に。小学生のうちから何をすべき?
「プログラミングって、いまは大学入試に出るらしいよ」——保護者の間でそんな会話を耳にすることが増えました。
事実です。2025年1月実施の大学入学共通テストから、教科「情報」(出題科目は「情報I」)が加わりました。プログラミングやデータ活用は、「あったらいいね」の習い事から、多くの受験生が向き合う入試科目へと位置づけが変わったのです。
とはいえ、小学生の子を持つ親として気になるのは「じゃあ、うちの子はいま何をすればいいの?」ですよね。先取りで試験勉強をさせるべきなのか、それとも何もしなくていいのか。
この記事では、現役エンジニアであり小学生の父親でもある私が、まず制度の事実(何がいつ変わったのか)を整理し、そのうえで小学生の今できることを、誇張なしでお伝えします。結論を先に言うと、「小学生に入試の先取り勉強は不要。ただし、土台づくりには大きな意味がある」です。
「情報I」とは?——高校の必履修科目、そして入試科目へ
「情報I」は、2022年度から高校で始まった必履修科目です。文系・理系を問わず、すべての高校生が学びます。「パソコンの使い方を習う授業」ではなく、プログラミングやデータ分析まで含む、いわば「情報社会を生きるための基礎教養」の科目です。
情報Iで学ぶ4つの分野
情報Iの学習内容は、大きく4つの分野に分かれています。
| 分野 | 学ぶ内容の例 |
|---|---|
| ① 情報社会の問題解決 | 情報モラル、法規・制度、問題解決の手順 |
| ② コミュニケーションと情報デザイン | 情報の伝え方、デザインの工夫、メディアの特性 |
| ③ コンピュータとプログラミング | プログラミング、アルゴリズム、モデル化とシミュレーション |
| ④ 情報通信ネットワークとデータの活用 | ネットワークの仕組み、データベース、データ分析 |
注目してほしいのは、プログラミングは4分野のうちの1つだという点です。加えて「データを読み解く力」「情報を整理して伝える力」も問われます。つまり情報Iは「プログラマー養成科目」ではなく、論理的に考え、データと向き合う力を測る科目なのです。この視点は、後述する「小学生の今できること」に直結します。
共通テストでの扱い——60分・100点満点の「1教科」
共通テストでの「情報」は、試験時間60分・配点100点の独立した教科です。導入に伴い、共通テストは6教科30科目から7教科21科目に再編され、満点は従来の900点から1000点になりました(配点をどう扱うかは大学ごとに異なります)。
さらに大きいのが国立大学の方針です。国立大学協会は2022年1月、2025年度入試から一般選抜において、共通テストで従来の5教科7科目に「情報」を加えた原則6教科8科目を課す方針を決定しました。国立大学を目指すなら、情報Iは基本的に避けて通れない科目になった、ということです(配点の扱いは大学により差があり、当初は受験必須でも配点しない大学もありました。志望校の最新の募集要項で確認してください)。
いつから何が変わった?制度のタイムライン
「情報Iが入試に出る」という変化は、突然起きたわけではありません。小学校から高校まで、段階的に積み上げられてきた流れの到達点です。
| 年度 | 出来事 |
|---|---|
| 2020年度 | 小学校でプログラミング教育が必修化(既存教科の中で「プログラミング的思考」を育成) |
| 2021年度 | 中学校の技術・家庭科でプログラミングの内容が拡充 |
| 2022年度 | 高校で「情報I」が必履修科目に。2022年1月には国立大学協会が「原則6教科8科目」方針を決定 |
| 2025年1月 | 大学入学共通テストに「情報I」が初めて出題される |
| 2026年1月 | 共通テスト「情報I」2年目の実施。難易度が上がり平均点が大きく低下 |
つまり、いま小学生のお子さんは、小・中・高と一貫してプログラミングと情報活用を学び、その総仕上げとして入試で問われる最初の本格的な世代です。親世代が経験したことのない受験環境になるからこそ、「何をすべきか分からない」という不安が生まれるのは自然なことです。小中高の教育がどう変わってきたかの全体像は、子供のプログラミング教育の現状で詳しく解説しています。
2年分の実施結果からわかったこと
共通テスト「情報I」は、この記事の執筆時点(2026年7月)で2回実施されています。結果からいくつか重要なことが見えてきました。
平均点の推移——「簡単な科目」ではなくなった
| 実施年 | 平均点(100点満点) |
|---|---|
| 2025年1月(初年度) | 69.26点 |
| 2026年1月(2年目) | 56.59点 |
初年度は平均点が69.26点と高く、「情報Iは点が取りやすい」という声もありました。しかし2年目の2026年は56.59点と、10点以上の大幅な難化。プログラミング的思考やデータ活用に関する応用問題が増えたことが要因とされています。
ここから言えるのは、「情報Iは暗記でしのげるサービス科目」ではなく、考える力そのものを問う科目として本格化しつつあるということです。用語を覚えるだけでは対応できず、初見の問題設定を読み解き、筋道を立てて考える力が求められます。
「考える力」は一夜漬けできない
英単語や歴史の年号は直前の詰め込みがある程度効きますが、「順序立てて考える力」「データから意味を読み取る力」は、短期間では身につきません。スポーツの基礎体力と同じで、時間をかけて育つ力です。
だからこそ、「高校生になってから考えればいい」ではなく、小学生の今のうちから——ただし試験勉強としてではなく——土台を育てておくことに意味があるのです。
小学生に「入試の先取り勉強」は必要か?
結論から言います。必要ありません。
情報Iの教科書を小学生に読ませたり、共通テストの過去問を解かせたりするのは、まったくおすすめしません。理由は3つあります。
- 内容が発達段階に合わない: 情報Iは高校生の抽象的思考力を前提に作られています。小学生に無理にやらせても、理解できずに「情報=つまらない」という印象だけが残ります。
- 入試までに制度も出題も変わりうる: いまの小学生が受験するのは早くて2030年代。出題傾向は今後も変化していきます。特定の試験対策を先取りしても、賞味期限切れになる可能性が高いです。
- 本当に差がつくのは「土台」だから: 前述のとおり、情報Iで問われるのは知識よりも思考力。そしてこの思考力は、小学生のうちの遊びと経験でこそ、無理なく育ちます。
言い換えると、小学生の今やるべきは「情報Iの勉強」ではなく、将来情報Iを学ぶときにスッと理解できる頭の土台をつくることです。これは受験だけでなく、AI時代を生きる力そのものにもつながります。この点はAI時代に子供がプログラミングを学ぶ意味で詳しく書いたので、あわせてお読みください。
小学生の今できること5つ
では具体的に、家庭で何ができるでしょうか。現役エンジニアの父親として、私が実際に意識している順に5つ紹介します。どれも「勉強」ではなく「遊びと習慣」の延長です。
① ビジュアルプログラミングで「作る楽しさ」を経験する
Scratch(スクラッチ)のようなブロックを組み合わせるタイプのプログラミングは、小学生でも直感的に扱えます。ゲームやアニメーションを自分で作る経験は、「順序立てて考えると、思いどおりに動く」というプログラミング的思考の原体験になります。情報Iの③「コンピュータとプログラミング」の、いちばん自然な入口です。
大切なのは、完成度ではなく「自分で作った!」という手応えです。親は教える必要はありません。「どうやって動いてるの?」と聞いてあげるだけで十分です。
② 身近なデータを「見える化」して遊ぶ
情報Iのもう1つの柱は「データの活用」です。これも家庭で遊べます。たとえば、毎日の気温を記録してグラフにする、お小遣いの使い道を円グラフにしてみる、好きなゲームのキャラの強さを表で比べる——なんでも構いません。
「数字を集めて、絵にすると、何かが見えてくる」という体験が、データを読む力の種になります。自由研究のテーマにするのもおすすめです。
③ 学校のプログラミング授業を「好き」につなげる
小学校では2020年度からプログラミング教育が必修化されていますが、教科ではないため、扱いは学校や先生によって差があります。家庭でできるのは、授業をきっかけに興味が芽生えたときに、それを摘まないことです。
「今日プログラミングやったよ」と言ってきたら、「へえ、何作ったの?」と一歩踏み込んで聞く。興味が続くようなら家で Scratch を触らせてみる。この小さな積み重ねが、「情報は楽しい」という記憶を作ります。
④ タイピングとパソコン操作に慣れておく
地味ですが効果が大きいのがこれです。共通テスト「情報I」自体はマークシート式ですが、高校の情報の授業や、その先の大学・社会では、パソコンを道具として使いこなせることが前提になります。
タブレットやスマホに慣れた子ほど、意外とキーボード操作でつまずきます。小学生のうちにタイピングゲームなどで遊びながら慣れておくと、後々の学習効率がまるで違います。
⑤ プログラミングスクールの無料体験で「合う学び方」を見つける
家庭での声かけに限界を感じたら、プログラミングスクールも有力な選択肢です。スクールの良さは、カリキュラムの体系性だけでなく、同世代の仲間と作品を見せ合う環境にあります。「もっと作りたい」という意欲は、家庭よりも仲間の中でこそ育ちやすいものです。
ほとんどのスクールは無料体験を用意しているので、まずはお子さんの反応を見てみるのが確実です。スクールで何が学べるかはプログラミングスクールとはを、選ぶときの観点はスクール選びのポイントをどうぞ。具体的な教室は主要スクールの紹介とスクール比較、お子さんの性格に合わせた選び方はタイプ別おすすめにまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q. 情報Iの対策は、結局いつから始めればいいですか? A. 試験対策としての勉強は、高校で情報Iの授業が始まってからで十分です。ただし、その土台になる「プログラミングに親しむ経験」「データで考える経験」は、小学生のうちから遊びとして始めるほど有利です。「対策は高校から、土台は今から」と覚えてください。
Q. 小学生向けの「情報I対策塾」に通わせるべきですか? A. 「情報I対策」を看板にした小学生向け講座に飛びつく必要はありません。小学生の段階で見るべきは、試験対策の看板ではなく、子供が楽しんで続けられるかです。楽しんで続けた結果として思考の土台ができ、それが数年後の情報Iにも効いてくる——この順番が本質です。
Q. 文系志望でも情報Iは関係ありますか? A. あります。情報Iは高校の必履修科目なので文理を問わず全員が学びますし、国立大学は文系学部を含めて原則6教科8科目(情報を含む)を課す方針です。私立大学でも利用は広がりつつあります。「うちは文系だから無関係」とは言えない時代になりました。
Q. 「情報II」という科目もあると聞きました。 A. 情報IIは高校の選択科目で、情報Iの発展的な内容(より高度なデータサイエンスやシステム開発など)を扱います。現時点の共通テストで出題されるのは「情報I」の範囲です。小学生の親御さんが今から気にする必要はありません。
Q. 親がITに詳しくなくても、家庭でサポートできますか? A. できます。この記事で挙げた5つのことは、いずれも親の技術知識を必要としません。必要なのは、子供が何かを作ったり見つけたりしたときに「面白いね、どうやったの?」と関心を向けることだけです。教えるのはスクールや教材に任せて構いません。
まとめ——受験は「追い風」、育てるのは「土台」
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 情報Iは2022年度から高校の必履修科目になり、2025年1月から大学入学共通テストに導入された。国立大学は原則6教科8科目(情報を含む)を課す方針で、プログラミングとデータ活用は事実上の受験科目になった。
- 2年目の2026年は平均点が56.59点と大幅に難化。暗記ではなく思考力を問う科目として本格化しており、一夜漬けが効かない。
- 小学生に入試の先取り勉強は不要。やるべきは、ビジュアルプログラミング・データ遊び・タイピングなど、「遊びの延長」での土台づくり。
- 家庭だけで難しければ、スクールの無料体験でお子さんに合う学び方を探すのが近道。
「情報Iが入試に出る」というニュースは、親を焦らせるためのものではなく、子供が今プログラミングに親しむことの価値を、制度が裏書きしてくれたと捉えるのがよいと思います。焦って勉強させるのではなく、楽しみながら土台を育てる。それが、数年後の受験にも、その先のAI時代にも効く、いちばん確実な準備です。
次の一歩としては、AI時代にプログラミングを学ぶ意味で学びの本質を押さえるか、タイプ別おすすめからお子さんに合った学び方を探してみてください。
※本記事の制度・数値は2026年7月時点の公表情報に基づきます。最新の入試情報は、大学入試センターおよび各大学の公式発表をご確認ください。