プログラミング的思考とは?必修化で実際に何をやるのか
「小学校でプログラミングが必修化された」と聞いて、こんな疑問を持った親御さんは多いのではないでしょうか。
- そもそも「プログラミング的思考」って何のこと?
- 学校で子供は実際にコードを書いているの?
- 学校でやるなら、わざわざ教室(スクール)に通わせる必要はないのでは?
私は現役のソフトウェアエンジニアで、小学生の子を持つ父親でもあります。この記事では、学習指導要領や文部科学省の資料をもとに「プログラミング的思考」を親目線の言葉に翻訳し、学校で実際にやること・やらないことを整理します。そのうえで、「教室は不要では?」という疑問に、できるだけ公平にお答えしていきます。
必修化を含めた教育全体の最新動向は子供のプログラミング教育の現状にまとめていますので、あわせてご覧ください。
プログラミング的思考とは?文科省の定義を親向けに翻訳
まず、公式の定義を確認しましょう。文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引」では、プログラミング的思考をこう説明しています。
自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力
……正直、これを読んで「なるほど!」となる親御さんは少ないと思います。私も最初に読んだときは、少し身構えました。
そこで、エンジニアの視点で普段の言葉に翻訳すると、こういうことです。
やりたいことを実現するために、「必要な手順を細かく分けて、正しい順番に並べ、うまくいかなければ直す」という考え方。
これがプログラミング的思考の正体です。ポイントは、コンピュータを使うかどうかは本質ではないということ。たとえば「カレーを作る」を考えてみてください。
- 材料を切る → 炒める → 煮る → ルウを入れる、という順番がある
- 「野菜を切る」は「玉ねぎを切る」「にんじんを切る」に分けられる
- 味が薄ければ煮込み直す、という改善をする
この「分ける・並べる・直す」という頭の使い方こそが、プログラミング的思考そのものです。学校が育てようとしているのは、特定のプログラミング言語の知識ではなく、この物事を順序立てて論理的に考える力なのです。
「プログラミング的思考」と「プログラミング」は別物
ここが最大の誤解ポイントです。「プログラミング的思考」は、いわゆる「プログラミング(コードを書く技術)」とイコールではありません。
- プログラミング的思考 … 手順を論理的に組み立てる「考え方」。コンピュータがなくても働かせられる
- プログラミング … その考え方を、コンピュータが理解できる言葉(コード)で実際に書く「技術」
学校の必修化がねらっているのは前者です。この違いを押さえておくと、次の「学校で実際に何をやるのか」がすっきり理解できます。
小学校のプログラミング必修化で「実際にやること」
2020年度から、小学校でプログラミング教育が必修化されました。ここで多くの親御さんが誤解しがちなのですが、「プログラミング」という新しい教科ができたわけではありません。
必修化の実態は、算数・理科・総合的な学習の時間など、既存の教科の中でプログラミングを体験するという形です。学習指導要領には、代表的な学習場面が例示されています。
- 算数(第5学年) … 正多角形の性質を使って、コンピュータに正三角形や正六角形を描かせる。「同じ長さの線を引く」「同じ角度だけ回る」という命令を繰り返す体験を通して、図形の性質を深く理解する
- 理科(第6学年) … 「電気の利用」の単元で、人が近づいたら明かりがつく、といった条件を設定してセンサーやライトを制御する。「こういう条件のときに、こう動く」を組み立てる体験をする
- 総合的な学習の時間 … 情報技術が身近な生活を便利にしていることを、プログラミング体験を通して確認し、探究学習につなげる
使われる教材の多くは、**Scratch(スクラッチ)のようなブロックを組み合わせる「ビジュアルプログラミング」**です。文字でコードを打ち込むのではなく、「10歩進む」「右に90度回る」といった命令ブロックをドラッグ&ドロップで並べていきます。
つまり学校でやるのは、教科の理解を深めるための道具としてプログラミングを「体験」することであって、プログラマーを養成することではありません。この点が制度設計の大前提になっています。
学校で「やること」と「やらないこと」を表で整理
ここまでを、親御さんが一番知りたい「結局、学校で何をどこまでやるのか」という形で表にまとめます。
| 項目 | 学校でやること(必修化の範囲) | 学校では基本的にやらないこと |
|---|---|---|
| 目的 | プログラミング的思考(論理的思考)を育てる | プログラマー・エンジニアの養成 |
| 位置づけ | 算数・理科・総合など既存教科の中で体験 | 独立した「プログラミング」という教科 |
| 使うもの | Scratch等のビジュアルプログラミング | Python・JavaScript等でのコード記述 |
| 内容 | 命令ブロックを並べて図形を描く・機器を制御する | 本格的なアプリ・ゲーム・Webサイト制作 |
| 時間 | 各教科の一部(年間で数コマ程度のことも) | プログラミングだけをじっくり続ける時間 |
| 評価 | 教科の学びの中で扱う | プログラミング単体での成績・検定 |
補足すると、中学校では技術・家庭科の中でより本格的な内容(ネットワークやより複雑な制御)を扱い、高校では2022年度から「情報I」が必履修科目になりました。2025年1月の大学入学共通テストからは「情報」が出題科目に加わっています。小学校はあくまでその入口という位置づけです。この学年ごとの流れは子供のプログラミング教育の現状で詳しく解説しています。
「学校でやるなら教室は不要では?」への公平な答え
さて、本題です。学校でこれだけやってくれるなら、お金を払って教室に通わせる必要はないのでは? という疑問はとても自然です。エンジニアの父親として、できるだけ公平にお答えします。
結論:目的が違うので、どちらも「不要」ではない
まず大事なのは、学校とスクールは目的もカバー範囲も違うということです。上の表で見たとおり、学校が担うのは「プログラミング的思考の入口を、全員に体験させる」こと。一方、スクールが担えるのは「その先の、興味を持った子を深く伸ばす」ことです。
学校の必修化には、構造上いくつかの限界があります。これは学校を批判しているのではなく、全員に平等に基礎を届けるという役割上、どうしてもそうなるという話です。
- 時間が短い … 各教科の一部なので、プログラミングだけを継続的に積み上げる時間は限られる
- 個別最適が難しい … クラス全員に同じ内容を教えるため、得意な子には物足りず、苦手な子には速すぎることがある
- 「体験」で終わりやすい … 深く作り込む、作品を完成させる、という達成体験までは届きにくい
学校とスクールの役割分担
整理すると、それぞれの得意分野はこう分かれます。
- 学校が得意なこと … 全員に基礎的な論理的思考の入口を届ける/教科の学びと結びつける/費用がかからない
- スクールが得意なこと … 子供のペースと興味に合わせて深める/作品を完成させる達成体験/現役エンジニア講師による実践的な指導/継続的にスキルを積み上げる
大切なのは、「学校でやるから通わせない」でも「学校が不十分だから必ず通わせる」でもなく、子供の興味の度合いで判断することだと私は考えています。学校の体験で目を輝かせた子なら、スクールでその火を大きくする価値は十分にあります。逆に、そこまで興味が向いていないなら、まずは家庭でScratchに触れてみるだけでも立派な一歩です。
なお、そもそもAI時代にプログラミングを学ぶ意味そのものに疑問がある方は、AI時代に子供がプログラミングを学ぶ意味を先に読んでいただくと、この判断がしやすくなると思います。
教室を検討するなら:後悔しないための視点
「うちの子は学校の体験で興味を持ったみたい。教室も考えてみようかな」と思ったら、次のステップとして役立つ記事を用意しています。
- そもそもスクールとは何かを知りたい → プログラミングスクールとは?
- 失敗しない選び方のポイントを知りたい → スクール選びのポイント
- 選び方の全体像をまとめて把握したい → スクールの選び方まとめ
- 具体的にどんな教室があるか見たい → 主要スクールとAIスクールという選択肢
- タイプ別のおすすめを知りたい → タイプ別の選び方とおすすめ
教室選びで一番大事なのは、いきなり契約せず、まず体験教室で子供の反応を見ることです。学校の必修化で得た「体験」を、スクールの体験レッスンでもう一段深めてみる。それで子供が夢中になるかどうかが、通わせる価値があるかの一番正直な判断材料になります。
まとめ
最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- プログラミング的思考とは、「やりたいことを、手順に分けて・正しく並べて・うまくいかなければ直す」論理的な考え方のこと。コードを書く技術とは別物
- 小学校の必修化で実際にやるのは、算数・理科・総合などの教科の中で、Scratch等を使ってプログラミングを「体験」すること。独立教科はなく、本格的なコードは書かない
- 「学校でやるなら教室は不要では?」への答えは、目的が違うのでどちらも不要ではない、というもの。学校は全員に基礎の入口を届け、スクールは興味を持った子を深く伸ばす
- 判断基準は制度の有無ではなく、子供の興味の度合い。まずは家庭や体験教室で反応を確かめるのがおすすめ
必修化は「学校がすべてやってくれる」という話でも、「学校だけでは足りないから焦って通わせよう」という話でもありません。学校が入口を用意してくれた今だからこそ、子供が本当に興味を持ったときに、その先をどう伸ばすかを親が選べる。そう捉えると、少し気持ちが軽くなるのではないでしょうか。